よくあるご質問

一般的な歯科治療について、あるいは歯周病治療やインプラントの治療について、さまざまなご質問をいただきます。私見ではありますが、回答をお示しします。

一般的な事柄について

「親知らずは抜かないといけないのですか?」

ケースバイケースです。まっすぐ生えていて上下の親知らずが噛み合っているときは、よほどむし歯がひどいとか歯周病がひどいといった場合を除いてそのまま使っていただくことが多いです。
ただし、多くの場合はそうでなく、斜めに生えて前の歯にぶつかりそれ以上生えてこないような状態の場合は抜歯することをお勧めいたします。(矯正によって真っ直ぐに生えるようにすることも場合によっては可能です)
特に、親知らずの部分が何度も腫れたり、違和感を生じたりを繰り返した経験のある患者様には早めに受診されることをお勧めいたします。

「歯磨きは1日に3回しないといけないのですか?」

決して回数が全てではありません。大事なことは、掃除しないといけないところに歯ブラシがきちんと当たっているか、ということだと思います。鏡を見ながら歯ブラシの先がどこに当たっているかチェックしながら歯磨きをしていますか?
鏡を見ないで歯を磨くことは、真っ暗の部屋で掃除機をかけていることと同じです。掃除はしているのにどこをきれいにしているのかわからない状態なのです。むしろ鏡を見ながらきちんと歯ブラシができ、その上フロスと歯間ブラシを適切に使っていただければ1日1-2回でも大丈夫だと思います。

「歯磨き粉(ねり歯磨き剤)は使わないといけないのですか?」

歯磨き粉はあくまで補助的なものだとお考えください。歯磨き粉を使わなくても歯ブラシ・フロス・歯間ブラシがきちんと使えるのであれば口の中の汚れを取り除くことできます。歯磨き粉がないと磨いた気がしない、という方も多いです(私もそうです)が、あまり心配はいりません。

「うがい薬を使った方がいいですか?」

うがい薬もあくまで補助的なものです。ただ、手が不自由になったりして歯ブラシがうまく使えなくなった方、歯科矯正の治療中で装置が口の中にある方、といった通常の歯磨きに支障が出ている方には強くお勧めしています。市販品で私がお勧めするのは「リステリン®️」です。昔から使われているうがい薬でやや刺激は強いですが、正しく使うことで歯肉炎を抑えることが立証されています。

「歯がたまにしみるのですが、これはむし歯なのでしょうか?」

必ずしも 歯がしみる=むし歯 というわけではありません。むし歯以外で多いのは知覚過敏症です。
知覚過敏症はむし歯ではありません。原因として最も多いのは歯磨きの力が強すぎるために、歯ぐきが痩せてしまい(力負けしてしまい)、本来歯ぐきの下に隠れているはずの歯の根っこが表面に出てきてしまうために起こります。歯の根っこは歯の痛みを伝える神経が入っているところですから、根っこが表に出てきてしまうと知覚過敏を生じやすくなります。
知覚過敏の症状はとても不快ですが、一番よくないのは、患者様が歯がしみるという理由でその部分の歯磨きがおろそかになり、結果としてむし歯や歯周病になってしまうということです。むし歯になれば痛みは増えますし、歯周病になれば治療はさらに複雑になります。
”歯がしみるけど、知覚過敏かな?むし歯かな?”と感じたら早めに歯科医院を受診されることをお勧めします。いきなり詰め物をするとか歯の神経をとるといった治療ではなく、なぜ知覚過敏になっているのか、本当に知覚過敏なのか、という原因究明や診断を行ってから、それに応じた治療を早めにしておくのが最善の対処法ですし、結果的に最も簡単な治療で済むと言えます。

「私の家族は全くフロスもしないし、1日に1度しか歯を磨かないのに、むし歯もない。私は1日3回は歯を磨くし、歯間ブラシもするがむし歯も歯周病もある。これは私の運が悪いのでしょうか?」

非常に難しい質問です。まずご家族に本当にむし歯や歯周病がないのかどうかはわからないことです。症状がないこと=むし歯も歯周病もない、ということではないからです。
とはいえ、仮にそうだという前提でお話をします。
むし歯や歯周病は、人間みんなが持っている口の中の細菌による感染によって生じる病気です。これはどの人にも起こります。つまり問題となるのは、1.ご本人がしっかり口の中のお掃除ができているか? 2.患者様ご本人の抵抗力(細菌と戦える力)があるか? という2点となります。
幼稚な例えで申し訳ないですが、戦争ゲームで考えてみましょう。相手から常に攻撃を受けているのに、自分へのダメージを減らすにはどうしたらいいでしょうか? 当然第一は相手の戦力を減らすことです。減らせずとも相手が戦えないように邪魔をすることは必要です。それが日々の歯磨きであり、フロスであり、定期的な衛生士によるメンテナンスです。物理的に邪魔をすることになりますから、細菌が攻撃態勢をとりづらくなります。
第二は患者様ご本人の抵抗力です。抵抗力は遺伝的なもの、年齢を含めた基礎体力に依存するもの、全身的な健康状態に影響されるもの、と様々な要因があります。基本的にご本人の抵抗力そのものを劇的に上昇させることは不可能です(いつかそのようなことができる時代がくれば素晴らしいことです)。大事なことは、患者様自身の抵抗力を下げないように健康に留意することとしか現時点では回答できません。
それはまず、病気をしないこと(特に糖尿病で血のめぐりが悪くなります)、喫煙をしないこと(血のめぐりが悪くなります)、ということが重要だと考えます。
したがって、仮に今ご家族の中にあまり歯も磨かないけどむし歯も歯周病もない、という方がいらっしゃっても、それが今後もそうである保証はどこにもありません。いつこの”細菌の攻撃とご本人の抵抗力”のバランスが崩れるかはわからないからです。
私の歯科医としてのこれまでの経験から申し上げれば、やはり大きな病気にかかったりであるとか、家庭環境の大きな変化であるとか、が発端となることが多いようです。
「自分の運が悪い」のではなく、いろんな原因の結果として生じている問題です。「治療しておいて本当に良かった」と思えるように、一緒に頑張っていきましょう。

「一度詰め物や被せ物をしたら一生持つのではないのですか?」

これもよくある質問です。どんなに素晴らしい材料と技術を使って治療をし、詰め物や被せ物をしても、一生持つ保証はありません。詰め物や被せ物は所詮“ツギハギ”に過ぎません。洋服でもそうですが、使っていれば、ツギハギをした部分からダメになっていきます。ツギハギをした部分はやはり弱いのです。歯の詰め物・被せ物も全く同じです。口の中は湿度がほぼ100%であり、温度は体温と同程度。しかもアイスクリームを食べたかと思えば、コーヒーを飲んだり、と温度変化の激しい環境でもあります。また絶えず嚙み合うため歯や詰め物、被せ物には相当な力が加わります。スポーツなどをして噛み締めると、奥歯には自身の体重のおよそ3倍の力が加わるとも言われています。こうした過酷な環境に耐えられるように日々研究が続けられ、より長持ちするような材料が開発されています。

歯周病の治療について

「歯石除去をしたり歯周ポケットの掃除をすると出血するのはなぜですか?」

歯石取りをしたり、歯周ポケットの中の深いところを掃除した時に出血するのは、決して衛生士が乱暴であるとか、下手であるとかではありません。最大の理由は歯ぐきの健康状態そのものです。
歯周病に罹っていると、歯ぐきに通常以上の水分を含むようになります(炎症によるものです)。また歯ぐきによる歯を支える機能が低下します(細菌の毒素や炎症によるものです)。語弊がありますが、歯ぐきの質そのものが劣化してしまうと言っていいと思います。極端な例えをすれば、健康な歯ぐきが新鮮でハリのあるトマト、歯周病に罹った歯ぐきが熟れすぎてブヨブヨになったトマト、のような感じとも言えるでしょう。後者をナイフでカットすると、グジュっとした果肉が簡単に漏れるイメージが想像できるかと思います。
話を戻します。そのため、器具を使って歯石とりや歯周ポケット内部の掃除を行うと、簡単に歯ぐき(正確には歯周ポケットの中の歯ぐき)が傷ついて出血してしまうのです。これは、健康な歯ぐきではまず起こらないことです。
しっかり歯石を取り、歯周ポケットの深いところを徹底的に掃除することで、歯ぐきを元の健康な状態に戻すことができます。最初は出血したり、痛みが出たりと驚かれるかもしれませんが、きちんと治っていきます。一緒に頑張っていきましょう。

「歯周病は歳のせいですか?」

歯周病は”老化”ではありません。歳をとったから、シワが増え、白髪が増えるという加齢現象とは全く別のものです。歯周病は細菌の感染症です。ただ風邪などのように体の外からやってきたものによる感染症ではなく、人間がみんな口の中にもっている細菌による感染症です。
そのためいつも口の中で人体を攻撃しており、それに対して人体も常に戦っています。 そのヒトの歯周病原因菌に対して戦う力が弱くなったり、逆に歯周病菌の力が強くなったりする(歯磨きがよくないためにヨゴレが増え、細菌が増えている状態がまさにこれです)ために、人間の方が力負けしている状態が歯周病です。ですから、ご高齢でも歯周病がほとんどない方もいれば、若いのに歯周病で総入れ歯になりかけている、という方もいます。
歳を重ねるにつれて歯周病になる、という傾向は、むしろ加齢に伴い手が不自由になったりして歯磨き自体が難しくなるから(その結果ヨゴレが溜まる)、といった要因がより大きいと思います。

「歯周病は薬を飲んだら治るものではないのですか?」

お気持ちはお察しします。歯周病は細菌によって引き起こされる病気ではありますが、その細菌は結核菌やo157のように外からやってきた菌ではなく、もともと患者様の口の中にいる細菌によって引き起こされたものです。ですから飲み薬(いわゆる抗生物質の内服)によって退治することはできないのです(仮に薬で大部分を退治してしまうと、菌交代現象と言って、いなくなった細菌の代わりに別の細菌が口の中に増えるという厄介な状況が起こります)。ですから、歯周病の治療とは、歯周病原因菌と共存することが前提であり、歯周病菌が人間に対して攻撃できないような環境を作ること・攻撃を受けても耐えられる環境を作ること、が目標となります。現時点において、それはあくまで患者さん自身による歯みがき、歯科医師・歯科衛生士による専門的な口腔衛生管理といった物理的な方法でしか達成できません。もちろん歯ぐきが腫れたりした患者様には抗生剤を処方することはありますし、それによって”一時的に“歯周病原因菌をやっつけることはできますが、抗生剤の効果が無くなるとすぐに元の細菌の活動性が復活するばかりか、ヘタをすれば抗生剤に対する耐性を持ってしまい、今後抗生剤が効かなくなってしまう可能性すらあります。抗生剤による治療はあくまで一時的なものに過ぎず、根本的な治療(細菌による攻撃を減らす環境をつくる、ということ)ではありません。
現在もさまざまな薬物療法が研究されていますが、残念ながら薬を飲むだけで治る、という段階には達していないのです。なかなか細菌とは厄介なものです。

「歯周病は再発するのですか?」

一度治療して治ったとしても、定期的なメンテナンスを行わないと、高い確率で再発することが分かっています。一度歯周病にかかった患者様はやはり“歯周病になりやすい”と考えるべきであり、治療によって治った後も定期的にメンテナンスをすることによって、細菌が攻撃できないように口の中の汚れを除去していくことが標準治療として推奨されています。

インプラントについて

「私はインプラントができますか?」

一番多く訊かれる質問の一つです。基本的に、インプラントは”通常の日常生活が送れる方”ならば誰でも可能です。ご高齢であっても問題はありません(80歳後半になってインプラント治療を受けられる方もいらっしゃいます)。これは患者様といろんなお話をさせていただいた上で、総合的に判断するしかない問題です。
逆に次のような患者様にはインプラント治療を控えさせていただく場合があります。

  • 未成年の患者様(顎の成長が終わっていない可能性があり、インプラント治療には慎重であるべきです。)
  • 頭頸部にガンの治療の一環として放射線治療を受けたことがある患者様(顎の骨の状態がインプラントに向かない可能性が高いです。)
  • 重度の”糖尿病を抱えている患者様(軽度ならばあまり問題はないのですが、内科あるいは糖尿病専門医での検診をお願いすることがあります。)


  • 「骨粗鬆症と診断されました。インプラントはできないのですか?」

    これもよく尋ねられる質問の一つです。様々な研究を見てみますと、骨粗鬆症の患者様であってもインプラントは問題なく長持ちする、という意見と、そうでないとする意見の両方が見受けられます。
    ただし、骨粗鬆症がインプラントに悪影響を及ぼしかねないとする研究をみても、その影響度合いは極めて小さく、治療自体を差し控えるほどのものではないというのが一般的な見解だと思われます。
    私もこれまで多くのインプラント治療をしてまいりましたが、骨粗鬆症のせいでインプラント治療ができなかった、という患者様はいらっしゃいません。もしご心配の患者様がおられたらご相談ください。

    「インプラントとブリッジとどちらがいいのですか?」

    最近の研究ではインプラントでもブリッジでも”しっかりメンテナンスをすれば”どちらも長持ちすることがわかっています。むしろ大事なことは治療をする前にどちらの治療を選んだ方がメリットが大きいかを慎重に見極めることです。
    ブリッジは歯がなくなった部分を補うために、歯を抜いた部分のすぐ隣の歯を削って、失った歯の分も含めて、削った歯に負担を求めるというやり方です。そのため、噛む力に対する設計を誤ると長持ちはしないですし、何よりも削った歯自体(ブリッジを被せた歯)がダメになってしまえばブリッジもダメになってしまいます。もちろん、きちんとメンテナンスをしていけば長持ちすることは先に述べたとおりです。
    逆にインプラントは歯を抜いた部分にのみ人工の根っこを埋め込むという方法のため、原則的に他の歯を削ったりすることはありません。その結果、抜歯をした部分の周囲の歯の寿命が延びることになります。またインプラント自体は人工物のため、虫歯になることはないという大きなメリットがあります。ただインプラントは外科治療であるため、手術が必要ですし、一般にブリッジよりも治療期間も長めで、費用も高価となってきます。メンテナンスを怠ればインプラント周囲炎というインプラント版の歯周病によってインプラントが抜けることもありえます。
    従いまして、患者さんの残っている歯の状態、噛み合っている歯の状態、歯磨きの状態、全身の状態、などを総合的に判断して、どちらが患者さんに適しているかを決める以外に最善の方法はなく、患者さん一人一人の状況によって、インプラントが最善と思われる場合もあれば、ブリッジがベストの方法だと考えられる場合もあります。

    「インプラントは一生持つのですか?』

    残念ながら、一生持つと保証できるものではありません。それは医学である以上、また道具である以上、致し方のないことです。
    考えてみてください。口の中は常に多湿(ほぼ100%)で、熱いコーヒーを口に含むこともあれば、その直後に冷たいアイスクリームを食することもあるという具合に、温度変化ひとつ取っても極めて過酷な環境です(←同じことをガラスコップでやればコップは割れてしまいます)。
    そして、会話や食事によって常に上下の歯が強い力で噛み合っています。それも1日に何万回もです。このような環境の中で歯はもちろん、人工物であるインプラントが全く劣化しないということは考えられないことです。やはり人工物ですから、徐々に何らかのダメージは受けています(自動車のタイヤやネジと同じです)。
    そうは言っても、現在主流となっているタイプのインプラントが使われるようになって40年以上が経過し、“適切な治療とその後の適切なメンテナンス”を行えば、20年以上問題なく維持されることも分かっています。当院では、インプラントの被せ物をしてから5年間は追加の費用負担無しでの保守を行なっています。 6年目以降に生じたインプラントの不具合につきましては経年数に応じて一部負担をお願いしております。

    「インプラントの値段はどうしてこんなに歯科医院によって違うのですか?」

    なぜ医院によってインプラントの値段がこれほどまでに異なるのか、とよく尋ねられます。
    インプラントの治療に含まれる費用は、検査費用、診断料、材料費用、手術費用、技工費用(技工士さんが被せ物を作る費用)、メンテナンス費用などがあります。医院によってはこれ以外にも費用が生じることがあると思いますが、基本的にはこれらを総合した金額がいわゆる”インプラント治療にかかる費用”と考えていいでしょう。 簡単にその内容をお話しします。

    検査費用は、実際に口の中を見たりレントゲン写真を撮ったりすることによって生じる費用です。必要に応じてコンピューター断層撮影(CT)を撮影することもあります。口の中の写真を撮影することも必要な場合がありますし、噛み合わせを確認するために模型(歯型)を採取することもあります。インプラントは自由診療になりますから、健康保険によって術前や術後の検査の費用が賄われることはありません。

    診断料ですが、技術費用の一環と言ってもいいでしょう。私はこれが最も大事な項目だと考えます。ここを誤るとこの先の治療の全てが間違いになるからです。この診断技術を向上させるためには、相当の勉強と技術の研鑽が必要になります。私たち歯科医はここに多大な投資をしています。日々の診療後に研修を行なったり、週末には学会に赴き治療技術だけではなく、診断のトレーニングをするのです。決して一朝一夕で培われる能力ではありません。大変申し上げにくいことですが、患者様にはわかりにくいことかもわかりません。歯科医院の中ではただ口の中を見ているだけ、レントゲン写真を見ているだけ、と思われるかもしれません。しかしそうではなく、それらを拝見しながら、どう治療を組み立てていくかを歯科医はほぼ同時に計画しています。むしろある程度の治療の最終ゴールがその時点で見えてきます。あえて申し上げれば、これこそが専門医の力だと言えます。私がアメリカの大学院にて専門医教育を受ける過程でも言われたことですが、“治療法はいろいろある。しかし診断は一つである。” まさに診断するということはそのくらい重大で貴重なことです。

    材料費用ですが、いろいろなものがあります。一番わかりやすいのは手術で使用するインプラント体でしょう。値段は上から下までさまざまです。いわゆるメジャーブランドである欧州製から日本製、その他アジア国内製、とあります。当院ではスイス製のストローマンインプラントを用いて治療をしています。それは長きにわたって研究された製品であるため、品質に問題がないこと、今後の供給に不安がないこと、という信頼性があるからです。人体に埋め込む材料が、信頼に足る品質を満たしていない可能性があるとすれば、どんな気分でしょうか。自分の家族が患者さんだとしたら使用できるでしょうか?供給不安の恐れがないことも重要です。過去数十年に渡って研究され尽くしたインプラント材料であるからこそ、全世界で何百万人という人に応用されており、材料が供給されなくなるという不安がありません。治療後にも保守されるべきインプラントが全世界に存在しているからです。これが歴史が浅い、研究もあまりされていない、それほど知名度のないインプラントともなると、供給会社が“売れない”と判断すれば、あっさり販売をやめてしまいます。そうするとどうなるでしょうか。そのようなインプラントをもし用いて治療していたとしたら、その先の保守ができなくなってしまいます。もし40歳でインプラント治療を受けたと仮定します。寿命が90歳とさらに仮定すれば、この先50年は部品が供給されなければ万一の保守ができないのです。メジャーブランドのインプラントは材料費用としても高額です。ですが、確実に患者様の信頼に足るものであることは専門医として自信をもって断言できます。

    手術費用ですが、これも歯科医院によって様々です。技術費用が主な部分を占める場合もあれば、追加の材料費用を含めることもあります。技術費用に関することとしては、手術に際してさまざまな器具を用意しておかなければならないことが挙げられます。手術の準備自体もかなり手間のかかるものであることをご理解いただければと思います。追加材料費用については特に、インプラント治療に必要な顎の骨の量が十分でない場合には、骨増生治療(再生治療の一つ)が含められることがあり、これにはさまざまな再生材料を用いる可能性があるため、費用は多岐にわたります。この項目は、歯科医院ごと、あるいは患者様ごとに全く異なるのではないでしょうか。ただ最初からインプラント治療に必要な顎の骨の量が十分にあるという患者様は極めて少数であり、手術費用については患者様の顎の骨の状態に大きく左右される項目だと言えます。

    技工費用ですが、これはいわゆる“被せ物”を作成するのに必要な費用です。まず、きちんとした品質(精度・見た目・材料の選択眼など)の被せ物を作成できる技工士さんはどこにでもいらっしゃるわけではありません。きちんと研鑽を積んだ技工士さんにお願いする必要があります。最近はAI(人工知能)が設計するような場合もあるようですが、やはり最後は人の手が入らないと信頼に足るものはできないと私は考えています。被せ物は一つ一つがオーダーメイドであり大量生産品とは異なるからです。私はそのような技工士さんに作成を常にお願いしていますし、密にコミュニケーションを取りながら、インプラントの被せ物を作っていただいています。そしてきちんとしたものを作成する技工士さんにはきちんとした対価をお支払いするのが当然です。過去数十年、古い世代の心ない歯医者さんがこの技工士さんへ支払う技工料金を値切りに値切ってきたために、技工士さんは職業として成り立たないほどにまでなってきてしまっています。真っ当な製品は真っ当な対価からしか決して生まれません。特にこのような人の手が必ず必要なものはそうである、と断言できます。

    メンテナンス費用ですが、これも医院によって様々です。当院では当院で手術して埋入したインプラントについてはメンテナンス(定期的なチェックとクリーニング)は原則無償で行なっています。他の歯科医院にて手術されたインプラントについては別途メンテナンスの費用をお願いしています。

    このようにさまざまな費用が合計されて、インプラントの治療の価格が決まります。むしろ“インプラント一本につきいくら”という価格設定がいかに難しいものか、ということが少しでもご理解いただければ歯科医として幸甚です。
    それでも敢えて申し上げれば、2019年現在でインプラント1本の価格(手術で埋めるインプラント体と被せ物を含めた価格)が30-40万円を下回る場合は、ここに書かせていただいた項目のどこかで妥協せざるを得ないのではないか、と思います。
    インプラント治療は健康への投資であり、それも高額な投資です。ただきちんと治療を行えば十分に患者様の健康に資するものだと考えます。